2020年11月1日、「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が行われ反対多数で否決されました。

前回の2015年5月に続き2度目の住民投票でしたが前回も否決されたため今回で2度目の否決となり、「再提案することはなくすでに白紙撤回」との声もあります。

10年間実現に向けて運動が続けられた大阪都構想とは一体どんな構想なのでしょうか。

今後、再提案されることはないかもしれませんが大都市制度議論に一石を投じた出来事です。

今回は、大阪都構想についてメリットやデメリットを含めわかりやすくまとめてみました。

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大阪都構想とは

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それでは大阪都構想についてわかりやすく説明していきます。

大阪都構想とは、今まで大阪府と大阪市でそれぞれ行われてきた広域行政を一本化して、権限や責任を市役所から区役所に移し「公選区・区議会」にて地域のことを決定できるようにするために掲げられた構想です。

東京都やロンドンなどがモデルとされ、2010年にテレビでもおなじみの元大阪市市長で弁護士の橋本徹氏により立ち上げられた地域政党「大阪維新の会」が最重要政策として掲げ推進してきました。

2015年、橋本徹市長時代に大阪都構想についての1度目の住民投票がありわずかな差で否決され橋本徹氏が政界を引退することとなりました。

しかし、2019年4月の統一地方選で大阪都構想を最重要政策として掲げる大阪維新の会が大勝したため、再び大阪都構想に対する議論が進み今回の2度目の住民投票につながりました。

現在、大阪には大阪府(人口約880万人)と大阪市(人口約270万人)の大きな権限と予算を持つ2つの自治体があります。

大阪市に大きな権限があるのは都道府県の権限を多く任せれられる政令指定都市(人口270万人)であるためです。

大阪都構想はこの大阪府と大阪市が別々に行い重複していた二重行政をなくすために、大阪市を廃止して権限や予算の少ない4つの特別区に分け、大阪市の大きな権限や予算を大阪府に一元化しようというものです。

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特別区4区に再編する大阪都構想の制度案は2020年9月3日に大阪市議会で可決されています。

特別区4区の名称は淀川区・北区・中央区・天王寺区の4つです。

大阪市を4つの特別区にすることにより、大阪府では大阪全体の成長・発展・安心・安全に関する事務を担い、特別区では住民により身近な事務を担うことで二重行政を解消させる狙いです。

大阪都構想という名称ですが、東京都をモデルとした行政システムであるためで大阪府の名称が「大阪都」になるわけではなく大阪府のままで、名前を変更するには法律の改正か新法の制定が必要です。

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大阪都構想と東京23区(特別区)の違いは?

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大阪都構想は東京都をモデルとしていますが違う点も多いのでわかりやすく説明します。

そもそも、東京都は東京府だったことをご存知でしょうか。

東京都は戦時中だった1943年に首都機能を強化させるために、「東京府」と「東京市」を廃止して誕生しました。

誕生当時は23区ではなく35区あり、独立した自治体というよりは都の内部組織でした。

その後、1947年に地方自治法により「特別区」として一般市と同じ自治体に位置づけられ23区に再編されましたが、1952年に戦災復興をスムーズに進めるため区長公選制が廃止されたことで再び都の内部組織に!

しかし、特別区側が自治権の拡充を訴え続けたことで1975年に区長公選制が復活、2000年の改正地方自治法で自治体としての地位を再び獲得しました。

東京23区も現在の形になるまでにはこのような経緯がありました。

大阪都構想は東京23区の現在の関係をモデルにしていますが、大阪独自の修正も加えられています。

例えば、東京23区が持つ権限は一般市並みですが、大阪都構想で誕生する4区は中核市と同等で保健所の認可設置なども可能です。

また、東京23区の人口は少ない区と多い区を比べると千代田区が約7万人・世田谷区が約92万人と大きな差があります。

この差により人口1人あたりの歳入も千代田区が61万円・世田谷区が20万円と大きな差があります。

大阪の4区は人口や財政規模が均等になるように、1区あたり60万~75万人に区割りされているので東京都とは大きく異なります。

東京都には区間の貧富の差を軽減するために、都と区の間で財政調整をする仕組みがあり大阪都構想でも取り入れられています。

現在は大阪市が持つ固定資産税や法人市民税の徴収権が大阪府に移り集まったお金の一定割合を分配するのですが、東京都は都が45%・23区が55%となっていますが大阪では大阪府が21%・4区が79%としています。

東京と大阪では財政事情が異なり、東京都は国から地方交付税をもらわなくても財政運用できる「不交付団体」ですが、大阪府と大阪市は年間合わせて約5,100憶円の交付税を受けてます。

東京と比べると大阪府に流れるお金の割合は少ないですが、裕福な東京と同じ財政調整の仕組みが大阪で機能するかとの疑問の声もあります。

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大阪都構想のメリット・デメリットは?

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大阪都構想のメリット・デメリットをわかりやすくまとめてみました。

大阪都構想のメリット

①大阪府と大阪市の二重行政の解消

現在、大阪市内の都市計画や都市デザインの決定権限などの都市計画事業において二重行政となっており、意思決定する際に大阪府と大阪市の利害が衝突してきました。

都市計画事業が大阪府に移管することにより利害の衝突が解消され意思決定の一本化になり、それぞれの意見をすり合わせる時間がなくなり物事を決めるスピードのアップにもつながります。

②住民サービスの充実や地域の発展

大阪市が廃止され4つの特別区に分区されれば区長も4人になり役所や議会も4つになります。

自治体が小さくなり地域住民の要望も通りやすくなるため、地域性に応じた住民サービスが実現しやすくなります。

実現すれば大阪市に1カ所しかない児童相談所や保健所が4つの特別区にそれぞれ設置され、保健所の下には数カ所の保健センターも設置されます。

教育委員会も現在は大阪市に1つあり420の小中学校の管理を行っていますが、4つの特別区にそれぞれ設置されれば約100校を管理することになるのでよりきめ細かいサポートをすることができるようになります。

大阪都構想のデメリット

①住所表記の変更による戸惑いや負担

大阪市が新しい特別区になれば当然ですが住所表記も変更されます。

住民による住所表記変更の手続きは不要となるように検討されてはいますが、慣れるまでは住民の戸惑いが予想されます。

また、住民の状況により会社印や名刺、顧客情報の変更などの負担が生じることになります。

新しいコストが発生

新しい特別区に設置されるシステムや、庁舎を新設する場合に維持するためのコストが発生します。

大阪市から特別区に移行する場合、初期経費(約241憶円)としてシステム改修費・庁舎整備費・移転経費・街区表示変更経費などや毎年システムを運用するためのランニングコスト(1年間で約30憶円)が発生します。

③大阪市に戻れない

大阪都構想が実現して大阪市が廃止されたら、再び大阪市に戻ることはできません。

これは、特別区をもとの一般市に戻す法律がないからで法律を作るとしてもとても長い時間と労力が必要です。

そのため、仮に法律が作られて大阪市に戻るとなるには遠い未来のこととなるでしょう。

まとめ

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大阪都構想についてメリット・デメリットを含めわかりやすくまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

2020年11月1日に2度目の住民投票が実施されましたが、否決となりました。

2019年4月の統一地方選にて大阪都構想を最重要政策として掲げる大阪維新の会が大勝したので、今回の住民投票では可決する可能性があるのではと思っていましたが、実際には1度目よりも賛成との差を広げて否決されることとなりました。

否決され会見で頭を下げる松井市長と吉村知事の姿がとても印象的でした。

3度目の住民投票はないとの発言がありましたが、最重要政策とする大阪維新の会と共に大阪都構想は今後どのようになっていくのでしょうか。

最後まで読んで頂きありがとうごさいました。

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