１９９５年３月２０日。
当時の営団地下鉄（現在の東京メトロ）にて日本史上最悪のテロ事件である、地下鉄サリン事件が発生しました。
犯行者はオウム真理教信者によるもので、サリン事件を起こした大本は教団の長である麻原彰晃によるものでした。
当時世界でも例のない事件についての真相に迫っていきたいと思います。
なぜ地下鉄が選ばれたか？
オウム真理教は、１９９５年２月に起こした事件について関与が疑われていました。
そのような状況で、近いうちにオウム真理教への強制捜査が迫っている危機感を抱いていました。
そこで、１月に発生した阪神淡路大震災なみの事件を起こせば、強制捜査の矛先をそらすことが出来ると判断し、公安警察、検察、裁判所に勤務する人達をターゲットに定め、これらの人達は霞が関駅で降りることから、霞が関駅でテロを起こすというふうに判断したといわれています。
また、テロを起こされた地下鉄の路線で共通しているのがすべて霞が関駅に停車するという点もありました。
ここでは各地下鉄車両ごとにテロが発生するまでの詳細について述べていきたいと思います。
１）千代田線（我孫子発代々木上原行）
千代田線の担当は、散布役に林郁夫と送迎薬に新見智光が担当しました。
マスク姿の林は千駄木駅より入場し、霞が関駅とは反対方向の綾瀬駅と北千住駅にて時間を潰した後、ＪＲ東日本の常磐線から千代田線へ直通する電車（我孫子発代々木上原行き）の先頭車両に北千住駅から乗車しました。
乗車した時間は北千住駅発７時４８分でした。
８時２分頃、新御茶ノ水駅への停車直前にサリンが入っているパックを傘で刺して逃走しました。
その後、列車はそのまま走行し、二重橋駅および日比谷駅で乗客数人が相次いで倒れました。
その後も次々に被害者が発生しました。
その後霞が関駅にて通報により駅員が駆け付けた際、サリンを排除しました。
この列車は霞ケ関駅を発車しましたが、更に被害者が増えたことから次の国会議事堂駅で運転を打ち切りました。
サリンが入っているとは知らずにパックを除去しようとした駅員数名が被害を受けて、そのうち駅の助役と応援の電車区の助役の２人が死亡して、２３１人が重症を負いました。
２）丸ノ内線（池袋発荻窪行）
丸ノ内線の池袋発荻窪行きの担当は散布役に広瀬健一、送迎役に北村浩一が担当しました。
広瀬は池袋から７時３７分発（荻窪行き）の３号車に乗車して、御茶ノ水駅でサリンを散布しました。
中野坂上駅で乗客から通報を受けた駅員が重症者を搬出して、サリンを回収しましたが、列車はそのまま運行を継続し終点荻窪駅に到着しました。
新しい乗客が乗り込みそのまま折り返したため、新高円寺駅で運行が停車されるまで被害者が増え続けることとなりました。
また、広瀬自身もサリンの影響を受け、林郁夫によって治療を受けました。
この電車では１人が死亡し、３５８人が重症を負いました。
３）丸ノ内線（荻窪発池袋行）
丸ノ内線の荻窪発池袋行きの担当は散布役に横山真人、送迎役に外崎清隆が担当しました。
横山は５号車に新宿駅から７時３９分に乗車して、四ツ谷駅でサリンが入っているパックに穴を１つ開けてサリンを散布しました。
列車は８時３０分に終点池袋駅に到着し、その際、本来なら駅員によって社内の遺留物の確認が行われますが、この時は実施されませんでした。
その後折り返し運転で荻窪駅に向けて出発しました。
本郷三丁目駅で駅員がサリンのパックをモップで掃除し、当電車は池袋駅に再び戻ってきました。
池袋駅に戻った電車はその後新宿駅に向けて運行を行いました。
列車はサリンが散布された１時間４０分後、９時２７分に国会議事堂駅で運行を中止しました。
被害者は約２００人の重症者を出しましたが、唯一この電車では死者は出ませんでした。
４）日比谷線（中目黒発東武動物公園行）
日比谷線の中目黒発東部動物公園行きの担当者は、散布約に豊田亨、送迎役に高橋克也が担当しました。
豊田は、東武伊勢崎線（現在の東武スカイツリーライン）直通、東武動物公園行きの先頭車料に始発の中目黒駅から７時５９分に乗車しました。
その後、恵比寿駅でサリンのパックを刺しました。
六本木駅、神谷町駅で異臭に気付いた乗客が窓を開けましたが、複数の乗客が倒れました。
神谷町駅に到着後、乗客が運転士に通報し、被害者は病院に搬送されました。
その後、後続列車が六本木駅を出たため、駅員によって先頭車両の乗客は後方に移動させられ、列車は霞ケ関駅まで走行した後、運行を取り止めました。
この電車では２人が死亡し、５３２人が重症を負っています。
５）日比谷線（北千住発中目黒行）
日比谷線の北千住発中目黒行きの担当者は散布役に林泰男、送迎役に杉本繁郎が担当しました。
他の散布約がサリン２パックを持っていたのに対して、林は３パックのサリンを持っていました。
また、３パックのうち１パックは破損し、２重層になっていたパックのうち袋から外袋内にサリンが染み出ていたそうです。
林は北千住発７時４３分の列車の３号車に上野駅から乗車しました。
その後、秋葉原駅で他の散布役より最も多くの穴を開けてサリンを散布しました。
乗客はすぐにサリンの影響を受けて、次の小伝馬町駅で乗客がサリンのパックをプラットフォームに蹴り出しました。この影響によりサリンによる被害が拡大するこのになってしまいました。
サリンのパックを小伝馬町駅で蹴り出した当列車は、サリンの液体が車両の床に残ったまま運行を継続しましたが、５分後八丁堀駅停車中に再度パニックに陥って、複数の乗客が前後の車両に避難し始めました。
８時１０分に乗客が社内非常通報装置を押すと、列車は築地駅で停車しました。
ドアが開くと同時に数人の乗客がホームになだれ込むように倒れ、列車は直ちに運転を打ち切きりました。
この光景を目撃した運転士が指令センターに「３両目から白煙が出て、複数の客が倒れている」と通報したため「築地駅で爆発事故」という憶測が続きました。
小伝馬町駅ではサリンのパックが出されたことで、後続列車である、八丁堀・茅場町・人形町・小伝馬町で運転を見合わせた４つの列車と、小伝馬町駅の手前で停止し、小伝馬町駅に停まっていた列車を人形町駅の手前まで退避させた後に小伝馬町駅に停車した列車の５列車も被害を受けました。
小伝馬町駅では５列車が到着し、うち２列車が小伝馬町駅で運転を打ち切ったため、狭いホームに多数の乗客が下ろされて、列車の風圧などでホーム全体に広がったサリンを多数の乗客が吸引する結果となり、小伝馬町駅では４人が死亡しました。
これにより、他の車両と比べて最多となる６列車が被害を受け、８人が死亡、２４７５人が重症を負いました。
被害者数まとめ
| 路線名（始発駅～終点駅） | 死者数 | 重症数 |
| 千代田線（我孫子～代々木上原） | ２人 | ２３１人 |
| 丸の内線（池袋 ～ 荻窪） | １人 | ３５８人 |
| 丸の内線（荻窪 ～ 池袋） | ０人 | 約２００人 |
| 日比谷線（中目黒 ～ 東武動物公園） | ２人 | ５３２人 |
| 日比谷線（北千住 ～ 中目黒） | ８人 | ２４７５人 |
| 合計 | １３人 | 約３７９６人 |
サリンによっての死者は１０人を超え、重傷者数も４０００人近いという大変大きな事件だったことが分かります。
当時テレビでニュース映像を見ましたが、凄まじい事件だったことを記憶しています。
事件発生後、各容疑者逮捕まで
事件発生から２日後の３月２２日、警視庁はオウム真理教に対する強制捜査を実施しました。
この強制捜査により様々なものが押収されましたが、事件の証拠になるような発見は至りませんでした。
また、オウム真理教もサリン事件への関与を否定していました。
警察の捜査はオウム真理教が関与したという確かな証拠がない状態で進められており、すぐに捜査に行き詰りました。
しかし、４月８日に教団幹部だった林郁夫を自転車窃盗の容疑で逮捕したところ、「サリンを地下鉄で撒いた」と自供したことから、捜査は急展開を迎えました。
林郁夫は教団に不信感を持っていたようで自供したと言われています。
その後、５月１６日には教団教祖の麻原彰晃が事件の首謀者として逮捕され、地下鉄サリン事件の逮捕者は４０人近くとなりました。
各判決内容について
東京地裁は、首謀者の麻原彰晃を始め、林郁夫を除く散布実行犯全員と、送迎役のうち新実智光に死刑を言い渡しました。
東京高裁の控訴審ではさらに第一審では死刑求刑に対し無期懲役だった井上嘉浩に死刑判決が言い渡されました。
実行役３人及び新実・井上両名の計５人に言い渡された死刑判決はいずれに最高裁で、２０１０年１月１９日に新実の上告が棄却されたことをもって刑が確定しました。
２０１２年（平成２４年）６月１５日、この事件に関与したとして特別指名手配されていた高橋克也が逮捕され、地下鉄サリン事件で特別指名手配されていた容疑者は全員逮捕されました。
高橋が逮捕されるまでに前述した新実を除く送迎役は全員求刑通り無期懲役判決が確定しており、高橋も他の送迎役同様一・二審で無期懲役判決（求刑同）を受け、２０１７年現在は最高裁に上告中です。
また、当事件を受けて、サリン等による人身被害の防止に関する法律が制定されるようになりました。
動画
まとめ
いかがでしたでしょうか？
私自身、地下鉄サリン事件が発生した時はこの平和な日本でとんでもない事件が起きたと思ったほどでした。
この地下鉄サリン事件以降は駅や空港、公共施設等で不審物についての警戒が行われるようになったと憶えています。実際にゴミ箱の撤去等の対策も実施されました。
これから先同じ事件が発生しないように、平和な世の中が続いていく事を心から想う事件だったと思います。
