皆さんの記憶にも新しいと思いますが、2016年(平成28年)1月15日、長野県北佐久郡軽井沢町の国道18号碓氷バイパスの入山峠付近で、大型観光バスが左側のガードレールに接触した後に、反対車線に飛び出して見側のガードレールを突き破り、道路脇に転落するという大事故が発生しました。
この事故で乗客、乗員15人が死亡、26名が重軽傷を負いました。
この事故の詳細について紹介したいと思います。
事項発生現場について
<出典:https://www.jiji.com/jc/d4?p=ksb115&d=d4_zz#photo8>
事故が発生した碓氷バイパスは碓氷峠経由のバイパスとして、1971年に開通(有料道路として)しましたが、急カーブが多い場所でした。のちに、1993年上信越自動車道(高速道路)が開通して、碓氷峠を楽に超えられるようになったことから、群馬県と長野県の間は上信越自動車道を通るのが基本となっていたようです。
2001年に碓氷バイパスは無料化されたこともあり、それなりの交通量はある状況でした。
ただし、急カーブも多いこと、夜間は照明がないことから走行時には注意が必要といわれていました。
事故発生時の状況について
出典:https://www.jiji.com/jc/d4?p=ksb115&d=d4_zz#photo10
事故を起こしたバスは東京都渋谷区のツアー会社(キースツアー)が企画を行い、旅行会社(トラベルスタントジャパン)を仲介して、東京都昭島市のバス会社(イーエスピー)が運行していた、原宿から長野県飯山市の斑尾高原に向かうスキー旅行の貸し切りバスでした。
バスの工程表では松井田妙義インターチェンジ(碓氷峠がある手前のインターチェンジ)から上信越自動車道に乗ることとなっていましたが、実際に運転手へ渡された運行指示書には出発地と目的地しか書かれておらず、どこを経由するか等の情報は記載されていませんでした。
事故発生の詳細ですが、群馬県から長野県へ向かう国道18号バイパスの緩やかな下り坂を走行中に、左側のガードレールにぶつかった後、対向車線に飛び出して、約100メートル先のガードレールにぶつかった後、道路右側に転落しました。
転落したバスは3メートル下の斜面に横倒しになり、フロントガラスが割れ、車体の全面が破損し、天井部分も立木に衝突したことで大破しました。
当時、事故現場付近は道路の凍結はしておらず、上りから下りに切り替わる付近ということから、居眠り運転や気が緩んでしまったことが事故の原因と考えられるが、原因は判明していません。
なお、事故発生現場にはタイヤの跡が1本しか残っておらず、下り坂でスピード超過になっているところでにカーブが差し掛かったところ急ハンドルを切った結果、片輪走行状態になったのではないかと考えられます。
事故発生後 ~ 救助活動について
出典:https://www.jiji.com/jc/d4?p=ksb115&d=d4_zz#photo15
事故直後、乗客が警察に110番通報を行い、佐久広域連合消防本部にも、「バスが事故を起こした」、「けが人がいるが暗くて見えない」などの119番通報が寄せられました。
バスには乗客39人が乗車しており(運転手は2人)、うち32人が首都圏の大学生でした。乗客の年齢別の内訳は以下の通りです。
19歳 | 11人 |
20歳代 | 25人 |
30歳代 | 3人 |
乗客の大半が若い方というのがわかります。
事故発生時、一部の乗客は車外へ投げ出されるなどとても悲惨な状況でした。
この事故で亡くなった人数は15人で、身元の確認を行った結果すべて大学生でした。
遺体を検分した医師によると、「犠牲者は瞬間的に頭部へ大きなダメージを受けて、ほぼ全員が即死だった」と述べています。
いかにすさまじい事故だったかがわかるコメントだと思いませんか?
駆け付けた消防によると、バスの天井部分は激しく潰れており、天井から床までの間は1メートル程度しかない状態だったことから、通り抜けが出来ないため、油圧カッター等を利用し窓を切り開いた上で、バス車内へ入って救助活動を行ったそうです。
事故の原因
出典:https://www.jiji.com/jc/d4?p=ksb115&d=d4_zz#photo9
今回の事故の原因は複数あるといわれています。そこで事故原因をクローズアップしていきたいと思います。
1)バスの運転について
事故後の警察の調査で、バスは左側のガードレールに接触する前から制御不能となった可能性があること、制限速度時速50キロメートルの現場区間を時速100キロメートル前後で走っていたとみられること、事故直前は時速96キロメートルで走っていたことがわかりました。
実際に乗客は「バスは事故が発生する前、かなりスピードを出しており、左右に揺れていた」と複数の証言が聞かれました。
事故現場の250メートル手前にある監視カメラには、「事故車とみられるバスが蛇行しながら走る様子」が写っていました。
2)運転手について
様々な調査で事故を起こした運転手の過去の勤務先の関係者は、「小型バスの運転が多く、大型バスの運転は不慣れで、深夜バスの経験も乏しい」と証言しています。また、運転手が勤務していたバス会社(イーエスピー)の幹部も高速道路だけで、一般道路の運転はあまり運転させないようにしていたとの事です。運転手が入社した際は本人が「大型バスの運転は不慣れ」ということを申告していましたが、2回の研修を経て大型バスの運行に就き、事故を起こした時点で4回目の大型バス乗務だったそうです。バス会社(イーエスピー)の営業部長は「研修は、同僚が運転する近郊のスキーツアーに同行して、現地に到着後、客を乗せずに周辺の山道などを走らせていた」、「会社として決まった研修ルールやチェック項目はなく、技量の確認は同乗のドライバー任せだった」ということを発言しています。
あるバス会社によると、「通常、路線バスの乗務員研修は経験者でも最低3ヶ月を必要とします」と証言しています。バス会社の運転手育成の問題も原因の1つと考えられると思いませんか?
3)バスの車体について
事故を起こしたバスは2002年10月に車台登録されており、現在はドライブレコーダーの設置が義務付けられていますが、当バスはドライブレコーダーが設置されていませんでした。このバス事故をきっかけに国はドライブレコーダーの設置を義務づけるように法整備を進めていきました。
また、事故車はバスの平均車齢11年に対し、約2年上回っていることから、車両に不具合があった可能性もあると言われています。
4)シートベルトについて
現在は高速バスでもシートベルトの着用が義務付けれらていますが、一般道でのシートベルト着用は罰則がない状態です。事故発生は一般道だったことから、シートベルトを着用していなかった乗客が多数いたと思われます。バス会社側(イーエスピー)は「口頭で運転手にシートベルトの着用をアナウンスするように」と言っていたことに対し、乗客の証言は「シートベルトをしていなかった人が多く、運転手も注意しなかった」と双方違う主張をしています。また違う乗客は「凄いスピードで運転しており、蛇行していたため遠心力で社内の乗客が揺れていました。はじめは山道を登っていると思いましたが、通常では考えられない曲がり方でした。シートベルトを着用していなかったですし、着用の指示はなかったと思います」と証言しています。
事故後の話をまとめると、運転手ならびに乗客ともにシートベルト着用の認識が薄かったことがわかると思いませんか?この事故をきっかけにバス会社や乗客も意識してシートベルトを着用するようになっていったと思います。
実際に事故後に観光バスに乗る機会があったのですが、一般道を走行していても運転手からは「シートベルト着用をしてください!」としっかりアナウンスしていました。
5)会社間の契約やバスの運賃について
今回発生したバス転落事故では、会社間の契約内容やバスの運賃についてもスポットがあたりました。
まず会社間の契約内容についてです。今回バス運行会社(イーエスピー)はツアーを企画した旅行会社(キースツアー)から受注しましたが、契約金額が国の定める基準料金下限(27万円)を大きく下回る値段でした。実際の受注金額は19万円で受注したとのことです。
また、全盛期に比べてスキー・スノーボード人口が半分以下に減少したこと、貸し切りバスに対する2000年の規制緩和等で、少ない乗客を奪い合う競争が激しくなっていたこと、コスト削減を会社側も重視していたことにより、安全管理がおろそかになっていたことも原因の1つだと言われています。
大型・中型バスと小型バス比較
大型・中型バスと小型バスについて比較してみました。
大型・中型バス | 小型バス | |
フットブレーキ | エアブレーキを搭載 | 液圧式ブレーキを搭載 |
制動距離 | 乗用車より長い。 | 乗用車並みに応答性は高いですが、乗車人数によっては一気に伸びる恐れがあります。 |
補助ブレーキ | 排気ブレーキが一般的で、エンジンブレーキの効果を更に高める効果があります。 | 排気ブレーキが一般的で、一部車種に補助ブレーキを持たない車種もあります。 |
内輪差 | 大きい | 小さい |
比較した結果、具体的なイメージが沸きづらいと思いますが、少なくとも大型、中型バスは乗車人数も多くなることから、より安全な運転が必要であるということはわかると思います。
動画
まとめ
軽井沢スキーバス転落事故は、過去に起こったバスの事故でも大きい被害だったといわれており、実際に1985年に起きた犀川スキーバス転落事故以来の最多の被害者を出した事故です。この事故をもとに様々な法整備が行われました。「価格より安心を」といった世間の動きや、バス会社も低価格より高付加価値をつけるといったことで方針転換を行っていくきっかけになったと思います。また、安全対策もより徹底するようになりました。
電車には電車の、バスにはバスの良さがあると思います。利用者に選択の自由がしっかりできるように今後もバス会社には頑張ってほしいと思います!
>事故直前は時速96キロメートルで走っていたことがわかりました
とありますが、どのような調査結果にもとずいたものでしょうか?
朝日新聞、NHK等の報道根拠であれば注意されたほうがよろしいです。
再現走行バスに同乗されていた方の専門家の意見では、どうやっても再現できないとのこと、搭載アナログタコメータで、衝突速度を割り出すのは無理とのこと。
車体のひずみはなく、長野県警では車体の検証をさせない、(警視庁では今まで例がない)、経験上90キロでは全員死亡とのことです。高速で突っ切ってもらわないと都合の悪い事情があります、ガードレールの老朽、欠陥放置がばれる。