皆さんの記憶にも残っているかもしれませんが、2001年9月1日に東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルにて火災が発生しました。

この火災では44人が亡くなるという大参事でした。

ビル火災の被害としては戦後5番目の大きさとなります。

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戦後に発生した主な火災について(死亡者数が10人以上)

年月日 場所 死亡者数
1955年 2月17日 横浜市のカトリック修道院 99
1969年 2月 5日 福島県郡山市の磐光ホテル 31
1972年 5月13日 大阪市の千日デパート 118
1973年11月29日 熊本市の大洋デパート 104
1980年11月20日 栃木県の川治プリンスホテル 45
1982年 2月 8日 東京・永田町のホテルニュージャパン 33
1986年 2月11日 静岡県のホテル大東館 24
1987年 6月 6日 東京都東村山市の特養ホーム松寿園 17
1990年 3月18日 兵庫県の長崎屋尼崎店 15
2001年 5月 5日 千葉県四街道市の土木作業員宿舎 11
2001年 9月 1日 新宿歌舞伎町雑居ビル 44
2008年10月 1日 大阪市難波の雑居ビル個室ビデオ店 16

※発生年月日順

過去には100人超の死亡者を出した火災が発生していることが表からわかります。2000年に入ってから一番多い死亡者を出した火災が歌舞伎町雑居ビル火災となります。

ここでは、ビル火災の詳細について述べていきたいと思います。

火災発生時の状況について

出典:http://www.jprime.jp

日本でも有数の歓楽街の歌舞伎町で2011年9月1日午前1時前、歌舞伎町内の明星56ビルで「人が3階から落ちました」と救急の通報があったのち、火災が発生したと119番通報がありました。

火災が発生した雑居ビルは地上4階、地下2階で、ビル内にはキャバクラ、イメクラ、麻雀店、飲食店が入っていました。

出火元は3階の麻雀店「一休」そばのエレベータ付近でした。

ビルの3階と4階の防火扉が開いていたことから、この2フロアに火災と特に煙の広がりが早かったことが、被害がさらに大きくなったと考えられています。

また、自動火災報知設備は設置されていましたが、誤作動が多かったことから自動火災報知設備の電源が切られていました。

また、4階は火災報知機ごと内装材で覆い隠していたとのことです。

避難器具については3階は未設置でした。4階には設置されていましたが、実質的に使用できない状態であったと言われています。

被害状況について

<出典:http://www.bo-sai.co.jp/sinjyukukasai1.htm>

発生した火災が原因で、44人が死亡3人が負傷しました。死亡した44人の死因は急性の一酸化炭素中毒によるものでした。3階、4階の被害内訳は以下の通りです。

フロア 死亡 負傷
3階 16人 3人
4階 28人 0人
合計 44人 3人

負傷をした3人については、3階麻雀店の従業員でした。助かった経緯についてですが、1人は既に火災が起きていたことを知らずに、扉を開けたところ空気が入ってきたことによりバックドラフトという現象が引き起こされました。

バックドラフトとは室内などの密閉された空間で火災が生じた時に、不完全燃焼によって火の勢いが衰えて、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に、窓やドアを開くなどの行動をすると、暖められた一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びついたのち、二酸化炭素への科学反応が急速に進み爆発を引き起こす現象です。この従業員は道路側の非常口からそのまま飛び降りました。

この飛び降りたという救急要請の通報が第一報でした。

また、残りの負傷をした従業員2人は、別の窓から屋根伝いに脱出をしました。

従業員という立場でありながら、避難誘導をしなかったということは一時話題になったことを憶えています。

店内に残されていた客、従業員は黒煙が埋めく店内で、必死に脱出しようと試みようしますが、通路には物が置かれていて、逃げ場のない状況下で一酸化炭素中毒になり動けなくなる・・・。

想像するだけでとても恐ろしいと思いませんか?

出火原因について

結論から申し上げると、出火原因の特定は出来ていません。いろいろと現場検証等実施していますが、考えられる内容としては、出火元は3階の踊り場にある都市ガスのガスメーターボックス付近であることが特定されました。このガスメータの状態が問題となり、火の勢いによって配管をつなぐアルミ合金製の継手が溶融して落下したという説が有力ですが、出火元発覚前の段階でアルミ合金が溶け出すほどの恩田に達しているか疑問があり、放火犯が故意に外したのではないかという説も飛び交いました。マスコミも当内容について当時話題なりました。

また、出火した時間帯には火災があったビルから立ち去る不審な人物を目撃したという証言がありますが、確証もなく、犯人も捕まっていないという状況です。

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マスコミの対応について

<出典:http://takashiba.dreamblog.jp/image/free/20070423152938.JPG>

火災が発生した時、NHKは午前1時50分前後に火災一報を伝えました。

その後、臨時ニュースが報じられて現場からの中継が始まりましたが、通常番組に10分程度入れる状態でした。

被害状況が明るみになりつつあった午前3時ごろから、「おはよう日本」が始まるまで特別報道体制を敷くようになり、現地帰社とヘリコプターからの空撮映像を交えながら現場の状況を伝えており、「おはよう日本」のニュース内容は当火災ニュースを中心に放送しました。

また、民放各局は深夜ということもあって、警察や消防の発表を元に事実経過を簡単に報道するのみでしたが、被害状況の詳細が明るみになっていくにつれて(NHKと同様、午前3時以降)、当時放送していた深夜番組を一部休止にしたりするなどして、臨時ニュースを報道しました。

土曜早朝の時間帯についても、通常の情報番組の内容を変更して火災ニュースを伝える曲や、レギュラー番組を休止して、報道特別番組を編成する局があったりと様々な対応を行いました。

あまり大きな事件として報道されなかった?

当火災は9月1日に発生して、事件後は大きく報道はされていました。

しかし、その後アメリカで発生した世界同時多発テロ(2001年9月11日)や日本国内で初めて見つかった狂牛病の疑いなどにより、マスコミ各社はこちらの報道にシフトしていったことで、かなり早い段階で風化されていったと思われます。

救急隊員のが語る当時の様子について

第一報が入り、現場に駆け付けた段階では、「大きな被害もなくすぐに救出できるだろう」と思ったそうです。しかし、その期待はその後の一言で一瞬で吹き飛びました。

逃げ遅れた人が大勢いる」と。

ビル内部では唯一の脱出経路だった階段が激しく燃えており、足下の陶器製のタイルは炭のように赤く光っていました。

金属の階段柵が熱で液体となり滴り落ちる中、出火元である3階の麻雀店「一休」にたどり着きました。

奥の厨房に1カ所だけある2メートルの高さの排煙口付近には、そこから逃げだそうとして力尽きた人が折り重なって倒れていました。

4階の飲食店「スーパールーズ」にも同じ状況が広がっていました。火の勢いは弱かったのですが、階段にはあちこちに荷物が置かれており、通路としての機能を失っていました。

窓もなく、室内にいた28人全員がなすすべくもなく息絶えていました。

避難路の確保など防火対策を取っていれば、助かった人はたくさんいただろう」。

と当時救助にあたった救急隊員は述べています。

管理者の管理責任について

この火災が発生した「明星56ビル」は、依然から消防署からの防火管理について改善を求められていました。しかし、ビルの管理者側は改善を怠っていました。そのような経緯もあって、2003年にビルオーナー、テナント関係者など計6人が逮捕されることになりました。

雑居ビルの問題点について

出典:http://www.jprime.jp/mwimgs

雑居ビルの場合は、店舗ごとに管理者が異なるケースが多いと言われています。

実際に火災が発生した明星56ビルは各フロアごとに入居しているテナントが違いました。

そのような場合は、各店舗の管理者同士で話し合いを行い消防計画を作成します。

さらに、次の「火災後の世の中の動きについて」で紹介していますが、無告知で24時間立ち入り検査が出来るように法改正が行われました。

ただし、テナントの入れ替わりも激しいかったり、ビルが建ったばかりのころは整備されていても、年月が経過していくと、ビルオーナーや店舗管理者が入れ替わることがあります。

改善指導をすることもありますが、さらに勧告や命令を出す段階になる前に、別の新しい店舗がテナントになるという現状があるため、非常に難しい問題です。

来店するお客様に対して安全を提供すべきテナント側は、意識して安全を保障してほしいと思いませんか?

火災後の世の中の動きについて

当ビル火災を契機に消防法の改正が行われました。具体的な内容は以下の通りです。

1)火災の早期発見および検知対策の強化

自動火災報知設備の設置義務対象が拡大しました。従来より小規模なビルにまで拡大されて、機器の設置基準の強化されました。

2)違反是正の徹底

消防署による立ち入り検査の時間制限の撤廃や、措置命令発動時の公表、建物の使用停止命令、刑事告発等の積極発動を行うことにより、違反是正を徹底することとしました。

3)罰則の強化

違反者の罰則は、従来の「懲役1年以下・罰金50万円以下」から「懲役3年以下・罰金300万円以下」に引き上げられました。また、法人の罰則も、従来の「罰金50万円以下」から200倍にあたる「罰金1億円以下」に引き上げられました。

4)防火管理の徹底

防火対象物定期点検方向制度が創設されて、1年に1回は有資格者(防火対象物点検資格者)による入念な点検と報告が義務付けられました。なお、有料に防火管理を行っていると認められる防火対象物には、定期点検方向義務を免除するという特例認定を受けることができるとされています。特例認定を受けた場合は、「防火有料認定証」を提示することができます。

動画

まとめ

いかがでしたか?火災という点では多数の犠牲者が出て、ご遺族の方には大変悲しい出来事だったと思います。事後には消防法の見直し等も行われ、社会に警笛を鳴らすことが出来た事件だったと思います。

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