みなさんは、筋萎縮性側索硬化症という病気をご存知ですか?

英語ではAmyotrophic lateral sclerosisと言うため、略してALSとされています。

以下は、ALSと統一させて頂きます。

2014年にネット上で、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、アメリカALS協会に寄付をする運動のアイス・バケツ・チャレンジが流行りましが、記憶にある人もいるのではないでしょうか?

ALSは、難病の一つとしても考えられており、多くの研究者たちによって原因の研究が進められている病気です。

アイス・バケツ・チャレンジはALSの研究を支援するための運動でしたが、ALSの名前は広まったかもしれませんが、どんな病気なのかは詳しく知らない人が多いと思います。

最近、ALSにより亡くなられた有名人もいらっしゃいました。

身近な病気ではありませんが、いつ何か起こるか分かりませんので、どんな病気が気になりますよね。

そこで今回は、詳しく知られていないALSについて、原因や初期症状、治療方法、余命、発症した有名人などについてまとめてみました。

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ALSとは?

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ALSとは、手足やのど、舌の筋肉などの呼吸に必要な筋肉がだんだんとやせて力が無くなってしまう病気で、難病の一つとされています。

筋肉がやせていく病気ですが、筋肉そのものの病気ではなく筋肉を動かして運動をつかさどる神経の運動ニューロンだけが障害を受けます。

ニューロンとは、神経細胞のことです。

ALSを発症すると、運動ニューロンは侵されてしまいますが、知覚神経や自律神経は侵されません。

そのため、五感と呼ばれている視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚などや、記憶や知性などの神経には障害は原則としてありません。

例えば、ふと熱いものに触ってしまった時に、熱い!と感じて手をひっこめたとします。

この、熱い!と感じるのは知覚神経、手をひっこめるのが運動ニューロンの働きがあるからです。

そのため、ALSを発症すると熱い!という感覚はあるにもかかわらず、手をひっこめることが出来なくなるわけです。

なんとも、恐ろしいですよね…。

ALSによって侵されてしまうのは、手を上げるなど自分の思い通りに体を動かす随意運動を行い随意筋を支配している運動ニューロンです。

心臓や消化器なども筋肉では?と思った人もいるかもしれませんが、筋肉でできてはいますが随意筋ではなく無意識に自動的に働いていて、自律神経が支配しています。

ALSによって自律神経は侵されないため、心臓や消化器には影響がありませんが、呼吸は自律神経だけでなく呼吸筋が随意筋であるため、運動ニューロンが侵されてしまうと呼吸筋が弱くなり呼吸困難になってしまいます。

ALSが発症する割合は10万人に1~3人と珍しい病気ですが、高齢者を中心として年々増加傾向となっています。

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ALSになる原因は?

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医療の進歩によって、病気の原因を究明する研究も大きな進歩をしていますが、ALSを発症する原因はまだ明らかになっていません。

しかし、過去の研究の中には原因ではないか?とされる、仮設がありますのて主なものをまとめてみました。

仮説①グルタミン酸過剰説

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そもそも論になりますが、手足がスムーズに動くのは「動かしなさい!」という司令が脳から出ているためです。

その司令が筋肉に伝えられるために運動ニューロンを経由しますが、この運動ニューロンは神経細胞だけではなく、樹状突起、軸索、神経細胞からできています。

 そして、軸索と神経細胞の間には隙間があって、その隙間のことをシナプスと呼びます。

脳からの司令はシナプスを経由してニューロンが受け取ることによって、電気信号に変わり軸索に伝わります。

ALSを発症した患者さんの運動ニューロンは、シナプスから出てくる神経伝達物質であるグルタミン酸を再び取り込む機能が障害されます。

これにより、神経細胞外のグルタミン酸が過剰になり運動ニューロンが死滅する説が考えられています。

仮説②環境説

紀伊半島でALSの患者数が多いことから、ALSの発症には環境が何かしら影響しているのでは?との環境説もあります。

しかし、これには医療環境など他の要因が関係している可能性も十分あるため仮説となっています。

仮説③遺伝性・家族性説

ALSは約90%は遺伝とは無関係に発症しますが、約10%は家族性で発症しています。

家族性で発症したALSの一部からは遺伝子の突然変異があり、これにより運動ニューロンが破壊されるのでは?との説も考えられています。

仮説④神経栄養因子欠乏説

神経の傷付いた細胞を回復させたり、神経を成長させたりするために必要な栄養成分が欠乏して、運動ニューロンが破壊されるのでは?との説も考えられています。

ALSの初期症状は?

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ALSを発症した場合の初期症状は、運動ニューロンが侵されて、どこの筋肉が弱くなるかによって大きく分けると2つに分けられます。

初期症状①手足が麻痺することによる運動障害

ALSを発症すると、疲れやすい、筋肉がピクピクする、重いものが持てない、手足が上がらないなどの自覚症状が出てきます。

手足の動きに異常を感じて病院を受診する患者さんは全体の約4分の3にものぼり、症状が出てくると手足の筋肉が痩せ細ってきます。

初期症状②コミュニケーション障害

舌やのどの筋肉が弱まってくると、舌の動きが思い通りにならなくなり、特にラリルレロやパピプペポの発音が不明瞭になります。

この舌やのどの筋肉が弱まってしまうことを球麻痺と呼び、他にも食べ物や唾液を飲み込みにくくなったり、むせることが多くなるなどします。 

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ALSの検査方法は?

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ALSと診断するには、運動ニューロンの障害が増悪していることを確認してから、同じような症状の疾患を除外して診断します。

そのためには、レントゲンやMRI、髄液検査、神経電動検査、針筋電図検査などを行って総合的に判断します。

病状を判断するために、呼吸機能検査や血液ガス検査などを行い呼吸筋障害の状態を調べます。

食べ物を上手に飲み込むことが出来ない嚥下(えんげ)障害がある時には、嚥下造影検査などを行い、適切な食事の摂取方法や形態を判断します。

ALSは認知症を合併することもあり、必要であれば神経心理検査なども行われます。

ALSの治療方法は?

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現在ALSには神経の減少を止めるための根治治療はありませんが、進行を抑制するための治療はあります。

しかし、効果は限定的となっています。

薬物治療

①内服・リルゾール

リルゾールを内服することにより、ALSの進行を抑える効果が期待出来ます。

しかし、呼吸機能が低下している時には逆に悪化させてしまうこともあるため、慎重な判断が必要とされます。

②点滴・エダラボン

エダラボン点滴を初期に行うことにより、進行を抑えることが期待出来ます。

この方法は、腎機能が低下している時には使用出来ないこともあります。

リハビリテーション

生活の質を保つために残存機能を維持する目的でリハビリテーションが行われます。

無理な運動負荷を与えてしまうと、逆に筋力低下を悪化させてしまうこともあります。

ケア

①コミュニケーション

症状が進行すると呼吸困難になることもあり、気管摂取処置を行うと発音が出来なくなってしまいます。

その場合、上肢が動かせる時には文字盤の指差しや筆記などでコミュニケーションを取ります。

②食事摂取

嚥下障害が進行してしまうと、誤嚥により喀痰が増えたり肺炎になるなどします。

それに対し、食事形態を嚥下しやすい方法に変更したり、喀痰が多すぎて自力では出せない時には、吸引を行い対応します。

食事形態を変更しても対応出来ない場合には、点滴や経管栄養などを行います。

③呼吸補助

呼吸困難が進行してしまうと、自力での呼吸は困難なため呼吸補助装置を使用することになります。

呼吸補助装置はマスクを鼻や口に付けて行うと方法と、気管切開をして行う方法があります。

この呼吸補助装置を使用することにより、ALSを発症しても健常者と同じ程度までの延命も期待することが出来ます。

ただし、呼吸補助装置を使用することによってALSの進行が止まるわけではなくて、手足の筋力低下が進行して寝たきりになってしまいます。

呼吸障害だけでなく構音障害や、嚥下障害も進行していくため、呼吸補助に加えてコミュニケーション、食事摂取のケアを同時に受ける必要が考えられます。

終日呼吸補助装置を付けなげればならない場合には、生涯装置を外すことは出来ません。

呼吸補助装置を使用しない方法としては、苦痛を軽減するために酸素吸入などを行い治療をします。

いずれにしても呼吸補助装置を使用する場合には、コミュニケーションや食事摂取、体位を変えたり、喀痰の吸引、緊急時にどう対応するかなど在宅支援サービスを利用が必要になります。

そのため、往診医やヘルパーなどと連携を取ることがとても大切になります。

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④緩和ケア

ALSを発症すると、ずきずきとうずくように痛む疼痛が起こり、進行期には動けなくなったり耐え難い痛みを伴います。

これに対応する方法としては、消炎鎮痛薬を使用し、それで効果が見られなければオピオイド鎮痛薬であるモルヒネを使用することがあります。

また、体位変換やマッサージも効果が期待出来ます。

ALSと診断されてからの余命は?

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重い病気には余命という言葉がつきものですよね。

ALSは現在、治癒のための治療方法は確立されておらず、1974年には特定疾患に認定された指定難病でもあります。

それほどの難病ですが、ALSと診断されてからの平均余命は2年~5年と言われています。

近年、医療の進歩により不治の病と言われていたガンでも治癒を目指せるものも出てきました。

ALSの治療方法も今後増えていくことを望みます。

ALSを発症した有名人は?

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ALSを発症した有名人もいましたのでまとめてみました。

・イギリスの理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士(享年76歳)

「車いすの天才物理学者」としても世界的に有名なステホーキング博士ですが、21歳の時にALSを発症し余命2年の宣告を受けました。

しかし、ホーキング博士が発症したALSは病状の進行がとてもゆっくりなもので、ブラックホールの特異点定理を証明したり、ホーキング放射を提唱するなど多くの業績を残されました。

近年は、発達する人工知能に対しての危険性も提唱していたようです。

ホーキング博士と彼の元妻のジェーン・ホーキングさんの関係を描いた伝記映画の『博士と彼女のセオリー』という映画もあります。

ホーキング博士は2018年3月14日に亡くなりました。

余命宣告を受けてから50年以上も生きて、活躍し続けていたなんてスゴいです!

・フランス文学研究者で学習院大名誉教授の篠沢秀夫さん(享年84歳)

テレビでも活躍していた篠沢さんは、2009年にALSと診断されて以来闘病しながら執筆や講演活動を続けていましが、ALSの影響による肺炎で亡くなりました。

亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。

まとめ

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ALSについての原因や初期症状、余命、発症した有名人などにたいてのまとめはいかがでしたでしょうか?

ALSとは運動ニューロンが侵されて、体を動かすために必要な筋肉が徐々にやせて力が無くなってしまう病気で、難病の一つとされています。

日本でもALSの患者さんは増えていて、約1万人いるそうです。

認知度が低い病気でもありますが、思っていたよりも患者数が多く驚きました。

現在は原因が明確ではなく治癒も困難な難病ですが、医療の進歩により少しでも新しい治療方法が発見されると良いですよね。

難病と聞くと遠い存在のような気がしてしまいますが、日本での患者数も年々増えているので知識を頭に入れておくことも大切ですね。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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